1mの段差を飛び下り、着地で膝屈曲痛発現も2か月13回で完治

症例報告

Top Member 植田 康司

 

 

 

「患者」

45歳 女性

 

「症状」

膝の痛み

「来院日」

2018年4月中旬

「来院経緯」

患者は2週間前、

山へジョギングに向かう。

 

下山時、

1メートル程の段差をジャンプして飛び降りた際、右膝裏に激痛が走る。

 

7月に富士山登山をひかえていた患者は

1か月前から、山へのジョギングを週1回、ジムでの筋力トレーニングを週に2回、

体幹作りの為のヨガを週に3回。とトータル週6日、身体作りに費やしていた。

 

患者は、

初めての痛みに心配になるも、

「時間が経てば自然と痛みは引くだろう」と

医療機関は受診せず、湿布をはり、全ての運動を中止して様子をみていた。

 

1週間経過時、

膝を曲げたときの痛みはきついものの、それ以外の動きの痛みが引いた為、

ヨガを再開した。

 

更に、1週間経過時

膝を曲げた時の痛みが一向に改善しなかった為、

「7月の富士山登山がいけない」と不安になり、治療院を探す。

 

当院のホームページにたどり着き、

「ここなら、何とかしてくれそうだ」と藁にもすがる思いで来院を決意。

 

「治療経過」

1診目

現在、患者は、

「右膝を曲げたときの痛みを強く感じる」と訴えている。

 

触診・検査を行う。

赤〇 右膝後面外側の痛み

膝を伸ばす、歩く、片足立ち、ジャンプの着地等で痛みは感じない

 

1、内反・外反ストレステスト 「陰性」

(内側・外側側副靱帯)

 

2、前方・後方引き出しテスト 「陰性」

(前・後十字靱帯)

 

3、圧迫アプレーテスト 「陰性」

(内・外側半月板)

 

4、マックマレーテスト 「陰性」

(内・外側半月板)

 

膝には上記のような、動きを円滑にする為の大事な軟部組織がある。

 

特定の動きに強い痛みを感じている為、

検査は慎重に行った。

 

痛みが出ている筋肉は、

膝下筋という筋肉で外側半月板に付着している。

 

しかし、

全ての検査が「陰性」であった事で、

各靱帯、半月板に損傷はないと判断。

 

この膝下筋に、

日々のトレーニングで負担がかかっていた所に、

着地時の衝撃がスイッチとなり痛みが出たと考えられる。

 

また、

着地動作時に膝の内反が認められた。

ここまでの触診・検査・問診で得た情報は

 

  • 全ての徒手検査「陰性」
  • 膝下筋の圧痛と着地動作時の膝の内反への動き
  • 運動を中止した際、膝屈曲時以外の痛みの緩解

 

以上、3点を踏まえ

膝下筋にかかっている負担を取り除く事と下肢アライメントの調整を軸に治療を行う。

 

患者から

「富士山登山は絶対にいきたい」と要望。

 

患者には

十分可能であるが、大事なPOINTを3点伝える。

 

  • 今の身体に週6日のトレーニングは負担が強い。

症状の減少が認められても、トレーニングは許可をするまで、禁止とする事。

 

  • 身体にはこれまでの疲労の蓄積がある。

痛み方や場所は、症状の緩解と共に、身体自身のとらえ方が変わる。

その為、しばらく症状は変化しやすいので

治療間隔に関して、個人で判断しないこと。

 

  • 富士山登山に耐えうる身体の状態にする為、

初めの1か月は週に2回の治療とすること。

 

患者には、上記3点全てに承諾を得て治療開始。

 

膝屈曲時に一番強く痛む為、

この痛みをペインスケール「10」と設定し、治療開始。

 

(ペインスケールとは痛みを10段階で表わした指標のこと。10に近づくにつれ痛みが増す。患者に数字を示させる。)

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太衝に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

骨盤調整、下肢アライメント調整

 

治療後、ペインスケール「10」→「8」

 

次回は、3日後の来院予定。1診目施術終了。

2診目

前回から3日後の来院。

 

患者から

「痛みの強さは変わらず、痛む場所がかわった」と報告。

 

治療前、ペインスケール「8」

 

動作、患部を確認

 

膝裏の圧痛を確認。

膝屈曲時に痛むことに関しては変化なし。

痛む場所が、膝前面に変化。

 

膝裏の圧痛は初診時同様にあるが、痛み自体は減少している。

 

患者には、

初診時伝えたように、痛む場所が変化しているだけで

心配はない旨伝え、治療開始。

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太衝に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

骨盤調整、下肢アライメント調整

 

治療後、ペインスケール「8」→「7」

 

次回も3日後の来院予定。2診目施術終了。

 

5診目

前回から3日後の来院。

 

患者から

「左右の内転筋と左足首の違和感がある」

「痛む場所の変化はなく、一番初めのところが痛みます」と報告。

 

治療前、ペインスケール「6」

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太衝に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

骨盤調整、下肢アライメント調整、内臓・腹膜調整

 

治療後ペインスケール「6」→「4」

 

次回も、3日後の来院予定。5診目施術終了。

 

7診目

前回から3日後の来院。

 

患者から

「ずいぶん痛みが落ち着いてきました」と報告。

 

治療前、ペインスケール「3」

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太衝に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

骨盤調整、下肢アライメント調整、内臓・腹膜調整

 

治療後ペインスケール「3」→「2」

 

治療後、

痛みも落ち着いており、動きの改善が見られた。

 

患者には、ヨガの再開を指示。

筋肉トレーニングは全力ではなく、膝裏の痛みが出る前の

25%の負荷までとし、再開の許可を出す。

 

次回も3日後の来院予定。7診目施術終了。

13診目

前回から5日後の来院。

 

患者から

「ヨガ・トレーニング共によくできています」

「現在、トレーニングは70~80%程度の負荷で行っている」と報告。

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太衝に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

骨盤調整、下肢アライメント調整、内臓・腹膜調整

 

治療後、ペインスケール「0」

 

今日で、

富士山登山まで1か月。

 

症状は順調に改善しているが、

登山直前まで、週に1回のメンテナンスに移行する旨伝え、同意を得る。

 

13診目施術終了。

「患者さんの口コミ・感想」

「担当からの考察」

今回の患者さんである、

S・Hさんは、これまで経験したことのない痛みに襲われ

ひどく不安がっていらっしゃいました。

 

診察中も、「痛みはとれますか」「治りますか」と

何度も聞いてこられました。

 

私の経験上、

しっかり治るものですし、治せる自信もありました。

 

注意点は

膝関節周りの損傷の有無を注意深く行う事。

 

それを毎回の治療で行った結果、

今ではトレーニングを楽しめるまでに改善して、楽しんで頂いています。

 

S・Hさん、

富士山登山思いっきり楽しんできてください!

 

帰って来られたら、

これからも思いっきり楽しんでもらえるように、身体のケアを継続していきましょう!

 

 

それでは考察に移ります。

 

初診時の、S・Hさんの状態は、

 

  • 全ての徒手検査「陰性」
  • 膝下筋の圧痛と着地時の膝の内反への動き
  • 運動を中止した際、膝屈曲時以外の痛みの緩解

 

という状態でした。

 

膝の痛みは、

慎重に検査をし、判断しなければいけないPOINTがあります。

 

先に述べたように、

膝には、大事な軟部組織が存在します。

 

それぞれに大事な働きがあります。

 

 

  • 内側・外側側副靱帯

 

付着部位 働き 半月板との連結の有無
内側側副靱帯 膝内側 膝の外反抑制膝の伸展抑制

膝関節の外旋抑制

有(内側半月板)
外側側副靱帯 膝外側 膝の内反抑制膝の伸展抑制

 

2、前・後十字靱帯

 

付着部位 働き 半月板との連結の有無
前十字靱帯 脛骨顆間区~

大腿骨顆間窩

脛骨の前方移動抑制

(膝伸展)

後十字靱帯 大腿骨内側顆~

脛骨窩間隆起後方

脛骨の後方移動抑制

(膝屈曲)

 

青・前十字靱帯 赤・後十字靱帯

 

3、内・外側半月板

 

部位 働き 靱帯との連結の有無
内側半月板 脛骨上部 荷重時のクッション関節液の循環 有(内側側副靱帯)
外側半月板 脛骨上部 荷重時のクッション関節液の循環

 

以上のようになります。

 

S・Hさんの症状は

“膝外側後面の痛み”でした。

 

上記の中で考えられるのは、

 

  • 外側側副靱帯

(痛みが外側の為)

 

  • 前十字靱帯

(ジャンプの着地時に痛める事が非常に多い)

 

  • 外側半月板

(単独損傷の可能性が内側よりも高い)

 

この3つの損傷です。

 

いずれの部位であっても

損傷がある場合、膝の不安定性が現れます。

 

そして、

靱帯や半月板は血流が乏しく

自然治癒することが少ないとされています。

 

その為、

上記の部位に損傷が確認された場合は、

一度、病院・整形外科などの医療機関を受診することをお勧めします。

 

これが、

慎重に検査をし、判断をしなければいけないPOINTです。

 

S・Hさんは全てに検査が「陰性」だった為、

触診・検査で確認できた、患部の特定の筋肉(膝下筋)にかかっている

負担の除去と着地時に確認できた膝内反の動きの改善に努めました。

 

7診目まで治療に集中してもらい

あとの、6診で微調整を行い、膝の屈曲時の不安もなくなり、

トレーニングを思いっきり楽しんでもらうことができました。

 

ですので、

今まで経験した事のない痛みでも

 

原因さえ見極める事が出来れば、今回のように治してあげられる事ができます。

 

もしも、

あなた自身や、あなたの周囲の大切な方が

「経験した事のない痛みを解消したい」「目的や目標をクリアしたい」と

望んでいるなら、私に相談してください。

 

そんな方々を、一人でも多く治してあげたいと思っています。

 

感謝

鍼灸王国