3mさえ歩けなかった手術対象の脊柱管狭窄症が5ヶ月で完治

症例報告

Top Member 植田 康司

 

 

 

「患者」

 

 

74歳 男性

 

「症状」

 

 

 

脊柱管狭窄症

「来院日」

 

 

 

2017年11月初旬

「来院経緯」

患者は1ヶ月半前に

自宅のソファーで仮眠をとっていた。

 

仮眠を終え

身体を起こした際、「ギクッ」とした音がし、腰痛を発症。

 

患者は、整形外科を受診し

レントゲン撮影やMRIなどの精密検査を受ける。

 

検査の結果、

「腰椎椎間板ヘルニア」と診断を受ける。

 

医師からは

血流改善の薬と、痛み止めの飲み薬を処方された。

 

服用を続け、

発症から2週間経過時には、痛みが一旦治まる。

 

しかし、

その後1週間が経過した際、左脚全体に痛みが出現。

 

起立動作や歩行時に激痛を伴い、左膝から足趾にかけてしびれも現れた。

 

患者は

再度、整形外科を受診。

 

レントゲン撮影・MRI等の精密検査を行う。

 

その結果

腰椎椎間板ヘルニアに起因する「腰部脊柱管狭窄症」と診断を受ける。

 

医師からは

引き続き、血流改善の薬と、痛み止めの飲み薬を処方された。

 

また、

「服薬で改善が認められない場合、手術も検討しましょう」と告げられる。

 

患者は引き続き服薬を継続。

 

しかし、

症状は一向に改善せず、四六時中痛みとシビレに悩まされた。

 

患者は

日常生活は元より、仕事にも支障が出ていた上、

「手術は回避したい」その一心で、

脊柱管狭窄症の治療が可能な所がないかを知人に相談。

 

その知人も

過去に、同じ症状で悩まされ

当院の治療で完治した事から、「一度連絡をしてみては」と紹介される。

 

患者は

当院のホームページ内の治療方針や、

紹介者である知人が完治に至った経緯から、

「ここなら治してくれそうだ」と受診を決意。

「治療経過」

1診目

現在、患者は

安静時・活動時共に痛みとしびれを訴えている。

 

起立動作・歩行時の痛みと膝下~足趾にかけてのシビレの

増悪が一番辛いとの事。

 

触診・検査を行う。

 

歩行時、

痛みとしびれで左脚には全く体重がかかっていない。

 

図1に示した歩行状態で、1歩脚を出すのにも数秒かかる。

来院日は特に症状がきつく、院内の歩行も休み休みになる。

 

また、

歩行時の痛み・しびれは歩行距離に比例して増悪し、

数メートル~十数メートルで一度休まなければいけない状況である。

 

この歩行状態を間欠性跛行と言う。

図2に示した青ライン上に歩行時、痛みとシビレが増悪。

 

座位時は

起立動作・歩行時と比べ、痛み・シビレ共に落ち着く。

 

だが、

脊柱管狭窄症の特徴的な前屈時の痛み・しびれの緩解は見られない。

 

その為、

腰椎椎間板ヘルニアの検査を行う。

 

徒手検査で、

SLRテスト時にシビレの増悪は無かったが、左大腿部の後面に痛みが出現、

 

動作確認をした所、

「後屈時少しだけ痛み・シビレが楽なように感じる」と報告。

 

この事から、

「腰椎椎椎間板ヘルニア」が起因していることが示唆された。

 

検査・問診から得た情報は

 

1、歩行時の痛み・しびれの増悪と休み休みの歩行

2、座位時の痛み・しびれの緩解(前屈時には変化なし)

3、SLRテスト陽性

4、前屈より、後屈の方が楽である

 

以上の4点を踏まえ、

腰椎椎間板ヘルニアを起因とした「脊柱管狭窄症」を考慮して、今後対応する。

 

 

患者からは

「趣味であるWalkingを楽しみたい」と要望。

 

私の経験上

再度、Walkingを楽しむのは可能である。

 

しかし、先述したように

腰椎椎間板ヘルニアが起因していると示唆される。

 

その為、

器質的な変性(脊髄を保護する脊柱に変性が生じる)が原因で、

治療期間を要し、再発リスクも高い難治性の疾患である「脊柱管狭窄症」の

完治にはより時間を要する。

 

 

以上を踏まえ、

患者には再度Walkingを楽しむ為に大事なPOINTを4点伝える。

 

  • 椎間板ヘルニアと狭窄症の治療が必要になるので、

最初の2か月間は週に2回治療に来る事。

 

  • Walkingの再開は、可能であるが

完治には半年~1年の期間を要する為、治療間隔について自己判断しない事。

 

  • 再開の許可を出すまで、Walkingは禁止とする事。

 

  • 現在の症状に対して、より慎重な判断が求められる。

その為、Walkingが可能な状態になっても、継続して治療をする事。

 

今回の患者は

完治にむけ、特に1の治療間隔・回数が非常に重要である。

 

患者には

その旨伝え、4点すべてに同意を得て、治療開始。

 

 

現在、患者は

歩行時の痛みとシビレを一番強く訴えている。

 

この痛みをペインスケール「10」と設定し、治療開始。

(ペインスケールとは痛みを10段階で表わした指標のこと。10に近づくにつれ痛みが増す。患者に数字を示させる。)

 

シビレはその場での変化が出にくい症状の為、除外とする。

 

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整

 

治療後、歩行確認。

 

患者から

歩行時の左脚への加重は治療前より可能ではあるが、

「痛み・しびれ共に変化はない」と報告。

 

治療後、ペインスケール「10」→「10」

 

次回は3日後の来院。1診目施術終了。

2診目

前回から3日後の来院。

 

患者から

「痛み・しびれ共にかわりません」と報告。

 

動作確認。

 

左脚への加重は前回治療後の状態を維持している。

 

治療前、ペインスケール「10」のまま維持。

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整

 

治療後、歩行確認。

 

患者から

「来院前より少しだけ体重がかけられます」と報告。

 

また、

「しびれは変わらないが痛みが少しだけ楽です」と報告。

 

治療後、ペインスケール「10」→「9」

 

次回は2日後の来院。2診目施術終了。

 

6診目

前回から3日後の来院。

 

患者から

「痛みは少し楽になった感じがするが、しびれは大きくかわっていない」

「ただ、左脚への加重は順調に出来るようになってきた」と報告。

 

治療前、ペインスケール「8」

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整、下肢連動調整

 

 

治療後、ペインスケール「8」のまま維持。

 

次回は3日後の来院。6診目終了。

 

8診目

前回から3日後の来院。

 

患者から

「今日は冷えるので、左ふくらはぎのハリ感が強い」

「痛みは維持していて、シビレが2・3回目より少し落ち着いています」と報告。

 

治療前、ペインスケール「7」

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整、下肢連動調整

 

今日で1ヶ月が経過。

8診目から、後屈の可動域が広がり

「初診時よりも痛み・しびれがマシになる」と報告。

 

この事から、

初診時の推測通り、

腰椎椎間板ヘルニアに起因する「腰部脊柱管狭窄症」であり、

それにより症状の急激な悪化を招いていた。と考えられた。

 

治療後、ペインスケール「6」

 

次回は4日後の来院。8診目終了。

13診目

前回から、2日後の来院。

 

患者から、

「1月中旬に愛知に行く事になった」

「現地では歩いて移動するが良いでしょうか?」と質問

 

症状は順調に改善してきており、概ね問題ない。

 

ただし、

公共交通機関が使えるなら極力そちらを利用する様に指示。

 

治療前、ペインスケール「4」

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整、下肢連動調整

 

次回は3日後の来院。13診目終了。

18診目

前回から、7日後の来院。

 

患者から

「愛知では想像以上に歩け、うれしかったです」と報告。

 

ただし、

歩行時の痛み・シビレ共に

前回の治療後と比べると増悪している。

 

治療前、ペインスケール「4」→「5」

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整、下肢連動調整

 

今日で、初診から2か月経過。

週2回の治療で症状も順調に改善してきている。

 

次回から週2回と週1回の交互治療とする。

 

次回は5日後の来院。18診目終了。

24診目

 

前回から5日後の来院

 

患者から

「痛みと比べると、シビレの改善がゆっくりです」

「概ね順調ですが、日によりシビレを強く感じる日や、痛い時がある」と報告。

 

 

患者には

「神経の回復速度は、抹消に進むにつれ次第に遅くなる」

「ゆっくりでも改善してきているので、問題ないです」と伝え、治療開始。

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整、下肢連動調整

 

治療後ペインスケール「4」

 

今日で、初診から3ヶ月経過。

天候や日により、痛み・シビレに変化はあるものの

少しずつWalkingをしていくように指示。

 

治療も、週1回の治療とし24診目終了。

27診目

前回から、7日後の来院。

 

患者から、

「家の近くでお花見してきましたが、往復3km歩けました」

「しっかり歩いた分、今日は痛みを感じます」と報告。

 

治療前、ペインスケール「2」→「4」

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整、下肢連動調整

 

次回も7日後の来院。27診目終了。

35診目

 

前回から、7日後の来院。

 

患者から

「痛みはほぼない。しびれは若干残るものの、ずいぶん落ち着いています」と報告。

 

治療:

 

曲地・合谷に接触鍼、太谿に置鍼し、身体全体のエネルギー調整

内臓・腹膜調整、下肢アライメント調整、骨盤調整、下肢連動調整

 

治療後、ペインスケール「0」

 

今日で、初診から7ヶ月

シビレは若干残るものの、日常生活・仕事共に順調に過ごせている。

次回からは、メンテナンスに移行。

 

ただし、

先に述べたように、脊柱管狭窄症は再発のリスクも高い為、

通常は1ヶ月に1回のメンテナンスだが、2週間に1回とする。

 

35診目終了。

「患者さんの口コミ・感想」

「担当からの考察」

今回の患者さんである、Na~さんは

自宅で仮眠中に激しい痛みに襲われました。

 

しかも、一度症状が落ち着いた後に

再度、痛みとしびれに襲われるという非常に辛いものでした。

 

奥様と一緒に

色々と調べられたそうですが、治してもらえそうな治療院は見つからなかったようです。

 

そんな折、知人に紹介してもらったのが、当院でした。

 

「信頼できる友人からの紹介だったので心配はしていません」

「治療方針を読んで安心しています」と

仰っていただいていましたが、内心は不安で一杯だったと思います。

 

「ここでダメなら手術しかない」

「先生よろしくお願いします」と沈痛な面持ちでお話し頂いた事をよく覚えています。

 

私は、どこにいっても良くならない。手術しかないと言われた患者さんを

毎日の様に診ています。

 

難治性である上に、

腰椎椎間板ヘルニアに起因した、脊柱管狭窄症という非常に切迫した状況でしたが、

Na~さんの希望である、Walkingを楽しめるように治せる自信はありました。

 

治療回数は計35回

その後も2週間に一度のメンテナンスとして治療は継続して頂いていますが

脊柱管狭窄症は完治に至りました。

 

徐々に、

プライベートの話しで笑顔が増えていった様子が、

とても印象的でした。

 

Na~さん、

これからはWalkingを思いっきり楽しんでください!

 

 

それでは、考察に移ります。

 

 

今回、ドクターの

椎間板ヘルニアに起因する脊柱管狭窄症という診断を基に

検査を行いました。

 

理由は、

脊柱管狭窄症の特徴的な、前屈時の痛みの緩解がなかったからです。

 

脊柱管狭窄症は、

 

  • 間欠性跛行
  • 下肢のシビレや筋力低下
  • 膀胱直腸障害

 

などの症状があり

 

ヘルニアは

 

  • 坐骨神経痛(腰から脚にかけての痛み・シビレ)
  • 立ち上がるのが辛い
  • 腰痛

 

等があげられます。

 

一般的に

この脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアは鑑別が必要な疾患とされ、

両疾患の大きな違いは

 

  • 痛みの緩解姿勢
  • 間欠性跛行の有無

 

この2点です。

 

表に示しますが、こうなります。

 

痛みの緩解姿勢 間欠性跛行の有無 主な原因
脊柱管狭窄症 前屈 有り 脊柱管の狭窄
腰椎椎間板ヘルニア 後屈 無し 脱出した髄核が神経を圧迫

 

3の原因については後程ご説明します。

 

 

今回の患者さんであるNa~さんはどうだったでしょう?

 

あなたも、振り返ってみて下さい。

 

  • 痛みの緩解姿勢は後屈。
  • 間欠性跛行は有り。

 

脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアの症状が

混在しているのがお分かりいただけると思います。

 

 

では、

なぜ鑑別が必要な疾患の特徴が混在していたか。

 

ここで

表3の主な原因が関係します。

 

それは、

ヘルニアにより「椎間板の髄核といわれる部分が脱出し、神経を圧迫」

赤↓で示した様に、左右どちらかの後方から脱出するケースが多い。

紫で囲った部分が、脊柱管。

 

服用で、一旦症状が治まるが

髄核の脱出が治った訳ではない状態で、日常生活・仕事と普段通りの生活を過ごす。

 

その結果、

髄核が著しく脱出し、「脊柱管を狭窄」

 

これにより、

腰椎椎間板ヘルニアに起因する脊柱管狭窄症が発症したと考えられます。

 

そして、

脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアに共通して言えることは

日々の生活の中で、自然治癒力・免疫力が正常に働けない状況にある。と言う事です。

 

その原因は

 

  • 内臓疲労の蓄積
  • 発症に至るまでの、身体のケア不足
  • 長年、特定の部分に過度の負担がかかる。

 

この3点。

 

それぞれ

違う原因ですが、結果として同じ事が引き起こされます。

 

1の内臓疲労は治癒力・免疫力低下に直結し、

2のケア不足は、治癒力・免疫力の働く環境が整いません。

3の特定の部位への過度の負担は、治癒力・免疫力の作用機序が破綻します。

 

その結果、

身体が本来もっている、治癒力・免疫力の低下を招くと言う事です。

 

あとは、

この原因の解消を徹底する事で、”手術も検討しましょう”と言われた

脊柱管狭窄症が完治に至ったのです。

 

ですので、

今回のように”手術”と言われた場合でも、

私の経験上、治してあげられる事が多いです。

 

もしも、

あなた自身や、あなたの周囲の大切な方が

「自分の脚でしっかり歩きたい」「痛み・しびれから解放されたい」と

望んでいるなら、私に相談してください。

 

そんな方々を、一人でも多く治してあげたいと思っています。

 

感謝

鍼灸王国